Case24-8; COVID-19 vaccine part2: ①中和抗体(Neutralizing Antibody)とは何か?、②抗体価とは?、③mRNAワクチンで誘導される抗体、④スパイク蛋白(Spike Protein)に生じるアミノ酸変異が及ぼす中和活性への影響とは?

(1)中和抗体とは何か?

中和抗体(Neutralizing Antibody : Nab)とは、新型コロナウイルス(SARS-CoV2)が細胞に結合するのを阻害する抗体を示します。SARS-CoV2は、ウイルス粒子表面に複数存在しているスパイク蛋白(Spike Protein)を用いて、表面にアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体を発現している細胞に侵入し増殖します。NAbは、図1の様にスパイク蛋白に結合することでウイルスのACE2受容体への結合を阻害することで感染成立を阻止する作用を発揮します(1)。

図1. 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の外観とスパイク関白、中和抗体との結合形態のシェーマ:ウイルス粒子の表面にスパイク蛋白(ピンク)と膜蛋白(レッド)、エンベロープ蛋白(グリーン)で描かれている。中和抗体は、スパイク蛋白にある特定の突起構造に結合することでスパイク蛋白とACE2受容体との結合を阻止すると考えられる。Assadisal S, Fatahi Y, et al. COVID-19: Significance of antibodies. Human Antibodies. 2020(28) : 287–297. DOI 10.3233/HAB-200429 Fig 1.より引用

NAbは、基本的に新型コロナウイルス感染から回復した患者血清には存在することが確認されています(2)。人種/性別その他様々な要因によりウイルスに対する免疫反応は人それぞれ多様性があり、中和抗体の力価(阻害する能力)も様々なレベル でいろんな部位に結合する抗体が産生されますが、多くの回復患者血清から抗体を定性して力価を調べることで主にスパイク蛋白(S蛋白)のRBD(Receptor Binding Domain)、および、NTD(Nterminal Domain)に対応する強い中和活性を示す抗体が存在することが現在解明されています(3)。しかしながら、強い中和活性を示す抗体群のうち、多く分画を占めているのがRBDに対する抗体であるのでこの部位に対する抗体産生を誘導することに主眼を置いてデザインされたワクチンが現在主に使用されているmRNAワクチン、アデノウイルスベクターワクチンです。