超音波エラスグラフィーについて

対象物(腫瘍や臓器)を”硬さ”から評価するのがエラストグラフィー:Elastographyです。エラストグラフィーには、診断に超音波を用いる超音波エラストグラフィーと磁場(MRI)を用いるMRエラストグラフィーがあります。超音波エラストグラフィーでは、ストレインイメージング法または、シェアウェーブイメージング法のいずれかを用いて組織の硬さを評価します・

エラストグラフィーは生体組織の応力と歪の物理概念(材料工学)に基づいて考案された手法です。物体に外力を加ええると変形(歪み)が生じますが、外力を除くと元の状態に戻ろうとする性質を弾性といい、完全にもとの状態に復元される場合を完全弾性体といいます。エラスグラフィーは、測定値が「歪み」か「ずり弾性速度」かによりストレインイメージング法( strain imaging)とシェアウェーブイメーング法(shear wave imaging)の2つに分類されます。


現在最も普及が進んでいるのはFUJIFILM社の超音波診断装置に実装されているReal-time Tissue Elastography (RTE)でプローブによる用手圧迫を利用した シェアウエーブイメーング法 です。これはプローブ圧迫により加わる応力(垂直応力)に伴う「歪み」が柔らかい組織では大きく、硬い組織では小さいという原理に基づき、硬い部分は青色、平均的歪の部分は緑色、柔らかい部分を赤色で可視化したものであり、当院採用のARIETTA 850超音波診断装置では、モニターの左半面に通常のBモード画像、右半面にRGB(256諧調 )表示のエラストグラフィー画像が表示されます。同一断面で同時相のエコー画像を比べることで腫瘍の悪性度評価に効力を発揮します。特に甲状腺腫瘍、乳腺腫瘍等の領域で注目されている検査法となります。

甲状腺腫瘍の悪性度評価に関して:


実際には10MHz前後のリニアプローブを用いて甲状腺直上の表皮を軽く圧排することで、上記の画像が得られます。呼吸による甲状腺の水平方向の移動を抑制する必要がありますのでRTEの際には軽く息止めをしていただく必要があります。あとは通常のエコー検査と同様で検査に伴う痛み等はほとんどありません。

学会の推奨しているエラストグラフィーの4段階視覚評価( Grade分類)を提示します。

Grade分類で3,または4は悪性腫瘍を強く疑う所見となります。

図1は、良性の甲状腺結節の内部に一部石灰化を認める症例です。基本的に甲状腺結節は、腫瘍の存在しない部分の甲状腺実質同様緑色で表示されていますが石灰化を伴う部分は硬い組織ですのでhardに相当する青色で表示されています。

図1. 内部に石灰化を伴う甲状腺結節のRTE画像

図2は、TIRAD4相当の低エコー結節ですが、エラストグラフィーでは全体が青色に表示されています。このような所見を示す結節は針生検(FNA)の対象となります。

図2. 針生検を考慮すべき甲状腺結節のRTE画像


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