大原美術館:『ドーヴィルの競馬場』デュフィ

pai33

輪郭線が目立つ絵だなと思いました。

大原美術館
ラウル・デュフィ(1877-1953)
『ドーヴィルの競馬場』1931

【鑑賞の小ネタ】
・デュフィは色彩の魔術師
・輪郭線が目立つ
・フォーヴィスムの画家
・競馬場を描いた作品多数あり
・テキスタイルデザインも手掛ける

ドーヴィル競馬場は歴史のある競馬場のようです。現在でも、競馬、障害競技、馬のオークション、ポロ、馬術の国際大会などが行われていて、馬に関するイベントも数多く開催されているそうです。絵の中にオレンジ色の建物が見えますが、形状にしても実際の建物にかなり近いように思います。

出展:JBIS Searchホームページより  ドーヴィル競馬場

絵の中の人々の多くは紳士淑女の装いで、競馬場の様子というよりは、社交界の一場面を見ているような気持ちになります。 デュフィの作品は、音楽や社交界をテーマにしたものが多く、その作品は生きる喜びに溢れています。

「ドーヴィル競馬場」をテーマとした作品をいくつか紹介します。

パリ国立近代美術館・ポンピドゥー・センター蔵
『ドーヴィル競馬場のパドック』1930

パドック(レースに出走する馬の下見所)の様子ですね。奥に、ドーヴィル競馬場のオレンジの建物が見えます。次の作品は、競馬場の中ですね。

ポーラ美術館
『ドーヴィルの競馬場』1935-1940

ドーヴィル競馬場の様々な場面を描いていたことが分かります。『ドーヴィルの競馬場』1935-1940 が一番分かりやすと思うのですが、輪郭線がとても特徴的です。色が輪郭線からはみ出していたり、輪郭線の中は塗られずに輪郭線のみの馬や人が描かれていたりしています。これを「色彩の輪郭からの解放」と言うそうで、目の残像効果を絵画に取り入れたものなんだそうです。なかなか大胆な表現ですが、絵画(2次元)に3次元の動きが出ると言えば出ますよね。そして確かに、対象が動いていれば、その対象の色彩はそこに留まってはいません。何だかちょっと難しい話になってきましたが、「動きを感じる」ということでいいのだと思います。

デュフィの色と輪郭線については、他の見方もあるようです。デュフィは、1912年から1928年に、フランス・リヨンの絹織物製造業ビアンキー二=フェリエ社と契約して、多くのテキスタイル(織物、布地)のデザインをしています。

デュフィ・ビアンキーニ蔵
『ヴァラドン』1914-20年頃 テキスタイル制作
1989年 毛織物

そして、織物を染める行程で枠と色がずれることがありますが、これが「色彩の輪郭からの解放」 のヒントになったのではないかとも言われています。

   

また、デュフィの作品はファッション誌「VOGUE」の表紙にもなっています。

「VOGUE」1935年5月表紙

一見、競馬場がテーマの作品が、ファッション誌の表紙になぜ?と感じると思いますが、テキスタイルのデザイナーでもあったデュフィの作品ということで納得できると思います。「VOGUE」は1892年から刊行されている歴史のある雑誌です。デュフィには、画家に加えて、 「VOGUE」の表紙に採用される程のテキスタイルデザインのスペシャリストという顔があったということなんでしょうね。

様々な顔を持つ芸術家は多いと思います。それを踏まえた上で、目の前の作品を鑑賞すると、また深みが増しておもしろいかもしれませんョ。