大原美術館:『冬の果樹園』クラウス

大原美術館
エミール・クラウス(1849-1924)
『冬の果樹園』1911

【鑑賞の小ネタ】
・クラウスはベルギーの画家
・ルミニスムを代表する画家
・作品名の変更あり
・後景に水辺あり

作品名が以前は『二月』だったような気がして調べてみると、国立新美術館の展覧会情報検索ページに、2007年「この1点」エミール・クラウス《二月》2007-12-25~2008-03-23大原美術館 とありました。いつ『冬の果樹園』になったのか分かりませんが、やはり作品名の変更があったようですね。

冬の風景であることは間違いなさそうです。ただ、冬なのに結構明るい色を使っていますよね。枯草?にしてはとても明るい黄色、紅葉かと思うくらいの葉の色、前景や後景に見える緑や青や紫やピンク色。そして川の色はきれいな水色です。冬の川の色といえば、筆者的には灰色っぽく描かれそうなイメージなんですが。
四季が全部詰め込まれたような作品だなと思いました。

この場所はどこなのでしょうか?
クラウスは、1883年からベルギーのダインゼ近くのアステネに居を構えています。第一次世界大戦中(1914年~1918年)は、イギリスのロンドンに移り、ロンドンの風景を描いていたようですが、戦争が終わるとアステネに戻って1924年に亡くなっています。『冬の果樹園』の制作年は1911年なので、アステネにいた頃ということになります。クラウスが住んでいる近くの果樹園なのでしょうか?
ところで、こんな絵を見つけました。

『レイエ川の10月の朝』1901

『冬の果樹園』と似た感じの風景画ですよね。制作年が1901年となっています。アステネに住んでいる頃の作品ということでいいと思います。季節は違いますが、同じような場所を描いたのでしょうか? そして、作品名に注目です。「レイエ川」とありますね。アステネを地図で調べてみました。

ベルギーのアステネの中心部には、確かに「レイエ川」が流れていました。『冬の果樹園』の光景が川だとすると、この「レイエ川」かもしれませんね。

さて、『冬の果樹園』の冬らしくない色彩についてです。これはルミニスム(光輝主義。明るい光に包まれたような作風)の画家だからなのではないかと思っています。クラウスはモネから強い影響を受けていますが、モネなどフランスの印象派の光の捉え方とはまた少し異なっているようです。次の作品の光の捉え方を見てみてください。

個人蔵
『昼休み』1887-90

逆光になっていますよね。クラウスの作品の特徴なんだそうです。

『冬の果樹園』をよく見ると、手前が暗く奥が明るくなっている感じがします。手前に4本の樹木が描かれていますが、どれも暗めの色が塗られています。樹木の見えてない裏側は、なんとなく明るい感じがしませんか?『昼休み』の女性と同じく、向こう側には光が当たっていて、つまり、逆光の状態になっているのではないでしょうか?

クラウスの逆光を上手く表現した絵は、心地良い眩しさがあって、なぜか懐かしい気持ちになります。 いいですね(^-^)

    

グリーニング美術館
『アステネのレイエ川』1885