大原美術館:『受胎告知』エル・グレコ①

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大原美術館の3室に1点だけ展示されているエル・グレコの『受胎告知』です。

大原美術館
エル・グレコ(1541-1614)
『受胎告知』1590頃―1603

【鑑賞の小ネタ】
・ほぼ400年以上前に描かれたもの
・エル・グレコとは「ギリシャ人」
・引き伸ばしたような描き方
・中央に神様の使い聖霊の白い鳩
・聖母マリアを示すたくさんのアトリビュート
 (青色のマント、赤色の衣服、白百合等)

エル・グレコの本名はドメニコス・テオトコプーロスで、イタリア語で「ギリシャ人」を意味するグレコにスペイン語の男性定冠詞エルがついた通称です。なんだかとても国際的です。

アトリビュートとは、個人を表すシンボルやアイテムのことです。画中の天使は、大天使ガブリエルです。百合の花はガブリエルのアトリビュートにもなっています。ちなみに天使には性別がないとされていますが、ガブリエルは女性ではないかという説があります。確かにふくよかで、手の動き等、女性的ですよね。

エル・グレコの引き伸ばしたような描き方についてですが、あえてそんな風に描いたようです。マニエリスム(特徴:首や四肢を極端に長く描いたり、不自然な空間表現をする等)の描き方ですね。そして、そもそも宗教画は教会の少し高めの位置に掲げられるものなので、下から見上げて丁度良くなるように工夫したとの見解もありました。鑑賞の際には少し身をかがめて観てみるといい感じに見えるかもしれませんョ(^-^)

エル・グレコの『受胎告知』は、大原美術館のこの作品の他に、とてもよく似た作品があと3点あるのを知ってますか?

ブタペスト国立西洋美術館
『受胎告知』1595 エル・グレコ
オハイオ州トレド美術館
『受胎告知』1600 エル・グレコ
サンパウロ美術館
『受胎告知』1600 エル・グレコ

本当によく似ています。大きな違いと言えば、大原美術館の『受胎告知』の聖母マリアにだけ、星の冠があります。「12の星の冠」は聖母マリアのアトリビュートの1つにもなっていますが、大原美術館の『受胎告知』 にのみ描かれていることからか、後になって描き足されたのではないかという興味深い見解もあるようです。

この4点の構図がほとんど同じ『受胎告知』、どの作品に一番グッと来るでしょうか? 筆者は大原美術館の『受胎告知』が一番好きなのですが、色んな見解が出て来そうですね。

ちなみに『受胎告知』は、その他多くの巨匠たちによって描かれています(投稿記事:多くの巨匠が描いた『受胎告知』)。

投稿記事 大原美術館:『受胎告知』エル・グレコ② へ続く…