番外編:水槽の外観と額の絵

水槽の外観は、こんな感じです。

自宅の60㎝水槽と額の絵

現在は川魚水槽でもあるので、アクアリウム的には、地味な感じですが、結構気に入っています。時々縄張り争いをしているようですが、みんな元気です。エビも。

コリドラスが5匹いるので、どうしても水が濁ります。底砂をモグモグしながら動き回るので。底砂を細かい石かサンゴにすれば、随分濁り方が違ってくるのは分かっているのですが、どうも抵抗があります。筆者的には、硬いタイプの底砂にすると、コリドラスのヒゲが切れてしまうのではないかと思っています。
見栄えはどうでしょうか?白っぽいサンゴの底砂の方が明るい感じがして華やかになるかもしれませんね。でも筆者は、土のような細かい円い粒の軟らかい底砂を採用するようにしています。ちなみに、水草のためには、土のような底砂の方がいいと思いますョ。土タイプの底砂には養分が含まれていますから。

ところで、水槽の上で見切れている額の絵の全貌がこちらです。

ルーブル美術館
フランス・ポスト(1612-1680)
『リオサンフランシスコとフォートモーリス、
 ブラジル』1635年から1639年の間

カピバラがいるのに気づいていただけましたか?特にねらったわけではなかったのですが、水槽の中のカピバラみたいな存在のコリドラスと、絵の中のカピバラがマッチしていて、我ながら密かに感心してしまいました。どちらも動きがかわいくて癒し系の生き物だと思います(^-^)

フランス・ポストはオランダの画家で、アメリカ大陸の風景を描いた最初のヨーロッパ人なんだそうです。

ブエノスアイレス国立美術館
フランス・ポスト(1612-1680)
『ペルナンブーコの風景、ブラジル』1637-1644年頃

筆者は部屋にいくつか額を飾っています。展示替えと称して、額の中のポスター( 筆者の好きな名画のジクレープリント )を時々替えて楽しんでいます。また紹介したいと思います。

大原美術館:『吸血鬼Ⅱ』ムンク

ムンクの有名な作品『叫び』や『マドンナ』と同じく、『吸血鬼』にも色んなバージョンがあります。

大原美術館
エドヴァルト・ムンク(1863-1944)
『吸血鬼Ⅱ』1895-1902
石版・木版

【鑑賞の小ネタ】
・ムンク的には『愛と苦悩(痛み)』だった
・油彩画の構図を反転させた作品
・この男女は誰なのか?

男性がぐったりして、女性が抱えている感じですね。ムンク自身は、「首にキスをしている女性」以外には何の意図もなく、吸血鬼の絵を描いたわけではないと主張しているそうです。

オスロ ムンク美術館
エドヴァルト・ムンク
『吸血鬼(愛と痛み)』1895

当初、ムンクは作品名を「愛と苦悩」としていたようです。ではなぜ『吸血鬼』となったのか?どうやら、ムンクの友人の詩人 スタニスワフ・プシビシェフスキ が、(まるで吸血鬼のようだということで)名付けたといわれています。この友人に注目です。過去記事で紹介しましたムンクの作品『マドンナ』のモデルとされる憧れのダグニー・ユールと結婚したあの友人なんです!ムンクにとっては友人であり恋敵でありなんとも複雑な関係性です。その友人に、吸血鬼のようだと言われ、ムンクはどんな気持ちになったでしょうね。

あまり好意的には受け止められなかったのではないかと思います。 友人プシビシェフスキ は、特に深い意味はなく、見たままの印象を言っただけのような気もしますが。どうなのでしょうね。複雑な人間模様が垣間見られます。

『吸血鬼Ⅱ』では分かりにくいのですが、よく見ると、男性が女性の体にしっかり手をまわしています。そして女性は包み込むように抱きかかえています。確かに、そこに愛があるように見えますよね。吸血鬼を描いたわけではないというムンクの主張が理解できます。 もしかしたら、ムンク自身とダグニー・ユールを描いたのかもしれませんね。

後になって、次のような絵を描いています。

オスロ ムンク美術館
エドヴァルト・ムンク
『森の吸血鬼』1916-1918

バックに色が入りましたね。全体が明るくなった印象です。前景の男女は、これまでの「吸血鬼」とほぼ同じ構図です。1985年の『吸血鬼』から、20年以上経ってのこの作品なのですが、作品名『森の吸血鬼』はムンクが名付けたようですョ。今度は自ら「吸血鬼」としているところをみると、この頃にはもう、「吸血鬼」というネーミングを受け入れていたのかもしれませんね。むしろ、色んな意味で気に入っていたかも。「吸血鬼」はとてもインパクトの強い作品名ですからね。

作品名にも色んな歴史、人間模様があるものですね。

番外編:水槽の経過報告①

川魚のカワムツとオイカワに追い掛け回されていたヤマトヌマエビは、まだ無事に過ごしています。ふわふわと漂って危ない時もありますが、基本的には水草の中など、安全な場所に潜んでいます。そして今一番お気に入りの隠れ場所、これがとても素晴らしいです。

流木と水草とエビとコリドラス

どこにいるか分かりますか? ここです!

流木の隙間に上手に隠れているんです。川魚たちは気づいているのかいないのか、ちょっとよく分かりませんが、特につつくこともなく素通りしています。

川魚たちの縄張り争いの軽減を目的に、コリドラスを投入しましたが、うまくいっているようです。コリドラスたちも問題なく馴染んでくれているようなので、もう2匹コリドラスを増やしました。実は筆者、昔からコリドラスが大好きなんです。新しく仲間入りしたコリドラスがこちら。

コリドラス・パンダ
コリドラス・ステルバイ

どちらも比較的安価で、よく市場に出回っているコリドラスです。特にパンダは人気が高いと思いますョ。ステルバイは体が丸々としていて、他のコリドラスと比べて成長が早いように思います。よく食べて、よく動いて、存在感のあるコリドラスです。

コリドラスは水草の下でじっとしていることが多いです。

そしてコリドラスは仲間で群れるのも好きなんです。なんだかカピバラに似てると思いませんか? 周りをあまり気にせず、じっとしていて、なんとなく群れる。水槽の中のカピバラです(^◇^) ヒゲもとてもかわいいですね。

水草も一株増えました。 ウォーターマッシュルーム です。

ウォーターマッシュルーム

屋外の鉢で育てられているのをよく見かけます。水中でも大丈夫なんですよ。どんどん伸びて水面まで到達し、後は這うように増殖していきます。この水草もとても丈夫は種なので、問題なく馴染んでくれると思います。葉っぱが丸くてかわいいですね。

川魚と大暴れしていた黄色のアルジイーターは、コリドラスとは仲良くやっているようです。アルジイーターがコリドラスに近寄って行くことが多いのですが、コリドラスはあまり気にしてない様子です。目の前にアルジイーターが来ても、コリドラスは底砂の上をモグモグし続けます。

アルジイーターと赤コリ

アルジイーターはドジョウの仲間、コリドラスはナマズの仲間、ドジョウとナマズだと思って見てみると、またおもしろいですョ。

大原美術館:『自画像』ムンク

白黒写真のような版画ですね。

大原美術館
エドヴァルト・ムンク(1863-1944)
『自画像』1895
石版(リトグラフ)

【鑑賞の小ネタ】
・1895年は不吉な作品が多い
・手がスケルトン
・ムンク32歳にしては疲れた印象
・まるで遺影のような自画像

1895年あたりのムンクの作品は、とにかく危うい感じのものが多いです。生と死、愛とは何か?というような、かなり重いテーマを常に考えていたのではないでしょうか。

家族内では、1895年に、父親と同じく医者になっていた弟が肺炎で亡くなり、妹が精神病で入院を続けていたりと、なかなか大変な時期だったようです。弟の死は、かなりショックだったのではないでしょうか。

ムンクの写真

写真と見比べてみても、かなり忠実に描かれていることが分かります。版画の方が疲れた印象ではありますが。1895年に描かれた別の自画像がこちら。

オスロ美術館
エドヴァルト・ムンク
『煙草を持つ自画像』1895

なんかすごい雰囲気ですよね。色んな思いを感じ取れるような作品だと思います。白黒の『自画像』について、NHK放送の「日曜美術館」で、まるで墓標のようだと語られていました。版画の上部に、ムンクの名前と1895の文字が刻まれています。作品にサインと制作年を書き込むこと自体は普通なのですが、本作品のような書き込み方はあまり見られないように思います。腕も骸骨ですし。墓標のようだと言われれば、そんな感じもしますね。

有名なムンクの作品『叫び』にしても、ムンクにとっては「生きる」ということ自体がとても大変だったのではないかと思います。

大原美術館:『マドンナ』ムンク

いろいろ意味深な作品ですよね。

大原美術館
エドヴァルト・ムンク(1863-1944)
『マドンナ』1895-1902
石版(リトグラフ)

【鑑賞の小ネタ】
・これはマドンナなのか?
・マドンナの周りに注目
・同じ構図の作品が複数あり
・ムンクはノルウェーの世紀末画家

マドンナとは、そもそも聖母マリアのことで、憧れの対象となる女性のことも意味していますよね。それにしても聖母マリアをこんな感じに表現することはあまりないように思います。憧れの対象となる女性だとしても、なんかちょっとすごいですよね。ムンクは同じような構図の作品を複数制作しているので、相当な思い入れがあったことは確かです。

ムンク美術館
『マドンナ』1893-1894
オスロ 国立美術館
『マドンナ』1894-1895
ハンブルグ美術館
『マドンナ』1895

大原美術館の「マドンナ」は版画(リトグラフ)ですので、色違いの作品もあります。

ムンク美術館
『マドンナ』1895-1902
国立美術館
『マドンナ』

版画の作品の左下に小さな人がいますが、これは胎児を表しているそうです。そして円い頭を持った紐状のものは、精虫(精子)らしいです。なんとも謎めいています。そして、版画版では分かりにくいのですが、マドンナは妊娠しているようです。

このマドンナ、 ムンクの友人ダグニー・ユール ではないかといわれています。ユールは、1895年9月28日に第一子を出産していますので、妊娠の時期的にもぴったりです。きっとダグニー・ユールで間違いないのでしょうね。

出展:Wikipedia ダグニー・ユール

当時ムンクは、「黒豚亭」という居酒屋で芸術家たちと交流を深めていました。そこのマドンナ的存在だったのがダグニー・ユールなんです。ムンクの理想の女性像だったようです。ユールはムンクの友人と結婚するのですが、結婚の条件が「性の自由」だったとか。後に恋人の1人だった青年に拳銃で撃たれて亡くなりますが、34歳の誕生日の3日前だったそうです。ユールの死は、ムンクに相当なダメージを与えることとなります。

ところで、胎児と精虫にはどんな意味があるのでしょうか?マドンナの表現にしても、何か女性に対してコンプレックスがあるように思います。ムンクの父親は医者で、比較的裕福な家庭に育ったようなのですが、ムンクが5歳の時に最愛の母を亡くしています。そして14歳の時に母代わりだった姉も結核で亡くしているようです。愛する女性たちの相次ぐ死は、その後のムンクの人生に大きく影響しそうですよね。ムンク自身も病弱だったようですから、生と死を常に意識する生活だったことでしょう。胎児は、ムンク自身なのでしょうか?そしてそれは生の象徴なのか死の象徴なのか? そうではなく、全く違う感情の表れというのもありですね。色んな解釈が出てきそうで興味深いです。

ちなみにムンクは、街ゆく人が振り返るほどの美青年だったそうですョ。

若い頃のムンク