Case 05; IPH: 肝内門脈分枝閉塞により高度の門脈圧亢進症 (presinusoidal portal hypertension) に至る特発性門脈圧亢進症(指定難病92)の検査法と画像所見、特にDCECT / MRI 画像の特徴と診断/治療に関してと1ケースレポート

Idiopathic Portal Hypertension (IPH) : 特発性門脈圧亢進症

①IPHとは、

検診で指摘された血小板減少症の精査症例の中に稀にIPHが紛れ込んでいることがあります。
IPHとは、肝内末梢の門脈枝の閉塞、狭窄により門脈圧亢進に至る病気(指定難病92)です。男女比は1:3で中年女性に多く発症する傾向があり、人口100万人あたり7.3人の有病率と報告されています。末梢血液検査では、唯一著明な血小板減少のみが目立つこともありこの点では、免疫性血小板減少症(ITP)が鑑別に上がってきますが、両者の鑑別には画像診断が効力を発揮します。IPHでは肝内門脈分枝閉塞により高度の門脈圧上昇(presinusoidal portal hypertension)を生じますので、血小板減少を指摘された時点で既に門脈系側副血行路が発達していることがあり、上部消化管内視鏡で食道/胃静脈瘤を指摘できることがあります。逆に、ウイルス肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎が否定された症例で側副血行路の発達と血小板減少が目立つ症例にでは鑑別疾患に挙げられる病態でもあります。ITP同様に脾腫を認めることがありますが巨脾を呈する頻度は低いようです。

②IPHの画像所見

MDCT/MRI画像所見では、①肝臓の辺縁(外套部)萎縮と代償性中心性肥大、②門脈1次分枝、2次分枝の著明な拡張と周辺浮腫、③著明な脾動静脈の拡張、④門脈血栓症などが特徴的所見となります。肝静脈の3D再構築画像はコントラストの問題で構成困難ですので、必要な場合はスワンガンツカテーテル検査で右心系静脈圧測定と同時に閉塞肝静脈圧測定、肝静脈造影を行う事で閉塞肝静脈圧の上昇がなく、肝静脈門脈吻合を示す”しだれ柳様”所見が描出できればほぼ特徴的所見を揃えたと言えます。内科的治療には抵抗性の疾患ですので、Hassab手術と脾摘術により、血小板数の増加と静脈瘤出血などの門脈圧亢進症状のコントロールを行うことで良好な予後を導くことに繋がります。

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