大原美術館:『人質』フォートリエ

インパクトの強い作品名ですね。

大原美術館
ジャン・フォートリエ (1898-1964)
『人質』1944
グワッシュ、石膏、紙

【鑑賞の小ネタ】
・シリーズ作品「人質」の中の一点
・画家自身がドイツ軍に追われる
・精神的圧迫の中で制作される
・「最も戦後的な画家」と賛辞される

藍色のような深い緑色のような、落ち着く色合いだなと思って見ていたのですが、作品名が『人質』ということで、一瞬にして見方が変わりました。筆者は、作品名を後で見る派です。先に作品名を見てしまうと、イメージが出来上がってしまうからです。作品に対する第一印象は、人それぞれ違うもので、それが大事なのではないかと筆者は思っています。とは言え、作品名はもちろん重要です。自分の第一印象と作品目を照らし合わせて、改めて鑑賞することをお勧めします。二度楽しめますよョ。

『人質』の制昨年は1944年です。第二次世界大戦(1939年~1945年)中ですね。フォートリエはフランスの画家で、パリで活動していましたが、ゲシュタポ(ドイツ軍の秘密警察)に追われ、避難生活を送っています。避難先で制作されたのが、連作「人質」のようです。 

「人質」シリーズの別の作品がこちら。

国立国際美術館
『人質の頭部』1944

彫刻もありました。

『人質の頭』1943-44

どの作品も横顔で、形が似ていますね。絵画作品の方をよく見ると、薄く顔の輪郭のような線があるのが分かるでしょうか? 存在の危うさを表現したものなのかなとか、色々想像してしまいます。

そして、目に注目です。大原美術館の『人質』の目は、悲しげではありますが、とても優しそうに筆者には見えます。国立国際美術館の『人質の頭部』の方は、ブラックフォールのような黒い目になっています。バックも暗い色なので、全体的にかなり陰鬱な仕上がりになっていますね。

ピカソの戦争をテーマとした作品『ゲルニカ』と同様、フォートリエ「人質」シリーズも、戦争というものを今一度考える見応えのある作品ではないかと思います。

ところで、作品の背景を知り過ぎて、鑑賞しているとヘトヘトになってしまう作品に出会ったことはないでしょうか?「人質」シリーズは、その系列の作品だと筆者は思っています。