謎めいた絵です。馬の頭がない…。

国吉康雄(1889-1953)
『跳び上がろうとする頭のない馬』1945
【鑑賞の小ネタ】
・岡山県岡山市出身
・1906年にアメリカへ渡った画家
・戦時下で「敵性外国人」となる
・アメリカ具象絵画を代表する画家
頭のない馬が衝撃的です。馬といっても、よく見るとこの馬はメリーゴーランドの木馬(回転木馬)ですね。頭だけでなく、左前脚と左後ろ脚もないように見えます。欠損だらけの回転木馬です。アルファベットも見えます。木馬の胸の下辺りに「re」、右後ろ脚の横辺りに「WE FIGH」です。また、折られた棒、黄色い包帯のような帯状の布、白い布(紙)の上の白い手形とブドウ等、謎めいたものがたくさん描かれています。
この絵が描かれたのは1945年、第二次世界大戦終戦の年です。国吉の何らかのメッセージを感じるところです。欠損だらの跳び上がろうとする木馬にどんな思いを込めたのでしょうか? 詳細は不明で、その解釈は鑑賞者に委ねられるタイプの絵となっています。ということで、筆者もあれこれと想像してみたいと思います。
まず、アルファベットについてです。これは判明しています。アメリカの戦時情報局に協力して制作した「拷問」というポスターの一部です。

『拷問』1942
リトグラフ
「torture(拷問)」の「re」の部分と、「WE FIGHT TO BUILD A FREE WORLD(私たちは自由な世界を築くために戦う)」の「WE FIGH」の部分です。制昨年が1942年ですので、第二次世界大戦(1939年-1945年)真っ只中ですね。1941年に「敵性外国人」とされ、アメリカに敵対しないことを証明する必要があったようです。
地面に突き刺さった棒のようなものに、ふわっとこのポスターが被せられ、その上に木馬が立てかけられて(置かれて)いるように見えます。ところでこの棒のようなもの、何なんでしょう?縦だけでなく、横にも棒が見えます。十字架になっているのではないかという記述がありました。

回転木馬は長い棒で支えられていますよね。この棒を引き抜いて途中で切れば、十字架を作ることはできます。絵をよく見ると、棒の切り口がどちらも黄色なので、いずれにしても元は一本の棒だったかもしれません。
縦の棒の先の部分に、黄色の包帯のようなものが巻かれ、それがほどけて地面に垂れ下がっているのが分るでしょうか? 絵に描かれる「包帯」の意味(象徴)は、負傷、痛み、精神的な傷、治療、回復となっています。秘密、力の封印というのもありました。ただ、この絵の場合、巻かれた状態ではなくほどけた(筆者には巻いている途中ではなくほどけ中に見えます)状態なので、少し意味合いが違ってくるかもしれません。そして黄色は、光、希望、幸福などのポジティブなイメージと、注意、警戒、嫉妬、裏切りなどのネガティブなイメージがあります。
ほどける黄色の包帯、どんな意味があるんでしょうねぇ。解釈は多種多様だと思います。
ところで、「拷問」のポスターが描き込まれていることを知らなかった頃の筆者は、頭のない木馬の前に、人がいると思っていました。グレーのつなぎのズボンと緑色の半袖を着た男性です。後ろ姿で頭の部分は見えず、太めの棒を両手で持ち左に振って前へ向かって歩いているというイメージです。どちらかと言うと、勇ましい感じです。もしかしたらそのような解釈でも良いのかもしれませんね。絵の解釈は鑑賞者に委ねられることが多いですから(^-^)
~その2へつづく~