Case 24-5; COVID-19 part5-2: 数理モデルから予見される接触追跡(コンタクトトレーシング)と早期隔離の有効性、2次発病率と症状発症前感染が基本再生産数に及ぼす影響、実行再生産数から推定される流行制圧率を80%以上に保つために必要な疫学的手段の実行強度について

緊急事態宣言解除により流行再燃は避けて通れない道のりと考えられますが、第二波、第三波による流行再燃を抑えつつ自粛を最小限に保つ疫学的手段として、①コンタクトトレーシング(Contact Tracing)、②早期隔離(Rapid Isolation)がどの程度のポテンシャルを持つものなのかをPubmedで検索し得た文献の範囲で考察してみました。

②Contact TracingとRapid Isolationの効果について

Contact TracingとRapid Isolationが、感染症のアウトブレイク制圧に関してのどれ程の効果が期待できるか算術的評価をしている論文はPubmedで探し得た範囲では1件のみであった。しかしこの論文では、二つの対策が基本再生産数Ro、実行再生産数Rtにどのように関与してくるか非常に分かりやすくに説明されていたのでピックアップした。

一般にContact Tracing(以後CTと略)とIsolationは、感染症のアウトブレイクを制圧するための常套手法と認識されている。そしてこの常套手段による制圧率を左右する2大因子は、2次発病率( secondary attack ratio)とPST(症状発症前感染)の存在率である。さらに症状発現後(診断確定後)から隔離までの日数の遅れは重大な影響を及ぼすと考えられる。日本ではこの手法を”クラスター対策”と呼んでいる。

以下は、Hellewell J, Abbott S, et al. Feasibility of controlling COVID-19 outbreaks by isolation of cases and contacts. Lancet Glob Health 2020; 8: p488-p496.より引用いたしました。

数理モデルのパラメーターは以下の条件設定に置かれた。グラフは、縦軸に流行制圧率(%)、横軸にCTの完遂率(%)を用いている。

①迅速隔離(Shot Delay)平均 3.43日
②遅延隔離(Long Delay)平均 8.09日
潜伏期(Incubation Period)平均 5.8日
初期感染者数: I(0) *t=0の時5, 20, 40人
⑤確定診断後の隔離率100%
基本再生産数 Ro1.5, 2.5, 3.5
⑦隔離後のRo0
症状発症前感染(PST)0, 15%
⑨無症候性感染(subclinical infection)0
流行制圧率100%とは、初期感染症例報告後12〜16週(3ヶ月)で新規感染者の発生人であることと定義し、CTと隔離以外の有効な介在手段が存在しない状況を想定、累積感染者数が5,000人に達した時点を制御不能と定義されている。
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