Case25-2; Thyroid nodule: 悪性甲状腺結節(甲状腺乳頭癌 (PTC))のBモード超音波画像の特徴とATA2015分類/TI-RADSスコア、その組み合わせ診断とFNAB(穿刺吸引生検)の適応について

甲状腺結節( Thyroid Nodules: TNs) : part2 ; 甲状腺乳頭癌(Papillary Thyroid Carcinoma:PTC)

2013年における甲状腺癌推定罹患数は15,629例(男性4.223例、女性11,396例)であり、人口10万人年齢調整罹患率は男性5.02、女性13.32と報告されている。甲状腺腫瘤の発見率は、触診では0.78〜5.3%(男性0.2〜8.3%、女性0.96〜4.1%)であった。また、触診で発見された結節が甲状腺癌である頻度は5〜17%と報告されている。一方超音波検査による甲状腺腫瘤の発見率は6.9〜31.6%(男性4.4〜18.5%、女性9.2〜31.6%)であり、超音波検査で発見された甲状腺結節における甲状腺癌の頻度は2.6〜8.3%である。

超音波検査の導入により甲状腺癌の症例報告数は増加の傾向にあり、特に早期段階で甲状腺癌が報告される様になってきている。Bモード超音波検査による甲状腺結節の診断には、EU-TIRADS (Thyroid Imaging Reporting and Data System) classificationや、ATA ( American Thyroid Association )の提唱するエコーパターンと悪性度を関連付けるカテゴリー分類などがある。

①TI-RADSでスコア4、または5に相当する結節は癌である可能性が非常に高い。

12年以上熟練した検者による超音波診断では、TI-RADS 4a, 4b, 4c,5を悪性と評価した場合、感度99%(95%CI : 99-100%)、特異度74%(95%CI : 60-80%)であると報告されている。

TI-RADS分類
参考文献2より引用しました。

②ATAでは、High Suspicion (or Risk)に相当するUS画像所見を呈する結節は癌の可能性が非常に高い。

High suspicionに相当するUS画像を呈するものは70%以上の確率で癌である可能性があり、結節径φ=1cm以上のものはFNAB (Fine Needle Aspiration Biopsy)が推奨される。Intermediate Suspicionに相当するUS画像を呈するものは10〜20%の確率で癌である可能性があり、結節径φ=1cm以上のものはFNABが推奨される.

ATA high risk
参考文献3より引用しました。
ATA intermediate risk
参考文献3より引用しました。
参考文献3より引用しました。

③TI-RADS とATA2015分類を組み合わせると、甲状腺癌を強く疑うUS所見として以下の様に整理される。

癌を疑う重要な画像所見として、①結節の横径よりも前後径が長い②辺縁不正像③微細な石灰化像、④周囲実質よりも顕著な低エコー像はTI-RADS、 ATA分類に共通した所見である。ただし辺縁不正像とは、甲状腺実質との境界が不明瞭なものを示すのではなく、境界は明瞭であるが境界部分が浸潤性または、鋸歯状を示すパターンと定義されている。

Malignant nodules
文献4より引用しました。

超音波診断で予め見当をつけることにより、FNABの必要性の高い症例を選別できることができ、少なからず検査合併症を生じうるFNABの適応の限定と感度を上昇させることができる。TI-RADS分類では結節サイズは考慮されていないが、ATA分類ではvery low riskではφ2cm以上、low riskではφ1.5cm以上、intermediate risk以上はφ1cm以上でFNABを推奨している。多くの良性結節が緩徐に大きくなると報告されていることから腫瘍径のサイズは良悪性の判断基準としての信頼性は高くはない。

[PTC : Image Presentation]

PTC 症例画像

[Borderline Case : Image Presentation]

鑑別困難症例

参考文献

1. 甲状腺腫瘍診療ガイドライン作成委員会. 甲状腺腫瘍診療ガイドライン2018. 内分泌甲状腺外会誌 2018; (35) supple 3: p1-p87 
2. Sánchez JF. TI-RADS classification of thyroid nodules based on a score modified according to ultrasound criteria for malignancy. Rev. Argent. Radiol 2014; 78(3): p138-p148
3. Haugen BR, Alexander EK, et al. 2015 American thyroid association management guidelines for adult patients with thyroid nodules and differentiated thyroid cancer. Thyroid 2016; 26(1). p1-p133.
DOI: 10.1089/thy.2015.0020
4. Macedo BM, Izquierdo RF eta al. Reliability of Thyroid Imaging Reporting and Data System (TI-RADS). and ultrasonographic classification of the American Thyroid Association (ATA) in differentiating benign from malignant thyroid nodules. Arch Endocrinol Metab 2018: 62(2); p131-p138.