減量に処方する薬の作用機序、副作用および使用法について

肥満外来で処方する薬の大部分は2型糖尿病患者に使用される薬のうち体重減少効果が副次効果として認められた実績のある薬となります。このうち他の内服薬と併用投与して問題となる相互副作用が小さいと考えらるものをチョイスします。

①内服薬

SGLT2(Sodium/Glucose coTransporter 2;SGLT2)阻害薬または、GLP-1、GIP/GLP-1作動薬のいずれかを用います

<1>SGLT2阻害薬とは?
体内にはSGLT2(ナトリウム・グルコース共役輸送体)という尿から血管へ糖を運ぶ運び屋のような物質が存在しますが、SGLT2の働きを阻害すれば尿として糖を水分とともに尿として排泄することができます。尿として排出できたグルコースの量(グルコース1g=4kcal)に相当するカロリーをこの薬を服用するだけで消費できることになります。例えば、ダパグリフロジン(フォシーガ(R))5mgを服用した場合、1日40〜60gのグルコースが尿を介して体外に排出されますので約150kcal相当5000歩のウオーキングに相当)するカロリー消費を容易に実現できることになります。排出量は尿量にも依存することになリますので水分をしっかり摂っていただき1日1.5L以上排尿していただくと理想的です.ダパグリフロジンの糖排出効果は血漿グルコース濃度に依存し服用量を5mg→10mgに増量した場合、糖の体外排出量は50〜80g(5mg服用に比べて10〜20g増)となり約300kcal相当1万歩のウオーキングに相当)するカロリー消費となります。

SGLT2の副作用について
実臨床で2型糖尿病や心不全患者に使用した経験上副作用の発生頻度が低く、安全に使用できる薬剤といった印象のある薬剤です。SGLT2阻害薬の副作用としては下表のようなものがありますが、特に注意すべきものとして尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎)があります。排尿を我慢する傾向のある人は特に注意が必要で、尿路感染症罹患防止のためにも1日1.5L以上の飲水(=排尿)を意識するようにしてください。尿路感染症を起こした場合SGLT2阻害剤は以後使用不可となります

*SGLT2阻害薬に特異的な副作用として正常血糖アシドーシスがあります。極端な食事制限や絶食、激しい運動、多量の飲酒、脱水などが誘因となり起こります。強い吐き気や嘔吐、おなかの痛み、ひどいだるさや息苦しさが急に出てきたような場合は正常血糖アシドーシスを起こしている可能性があります。SGLT2阻害薬の服用を中止するともに、電解質を含む清涼飲料で脱水対策を行なっていただき可及的速やかに最寄りの医療機関を受診くださいますようお願いいたします。

<2>GLP-1作動薬とは?
GLP-1(グルカゴン様ペプチド−1)というホルモンの受容体へ作用することで膵臓からのインスリン分泌を促し、分泌されたインスリンによって血糖値を下げる薬ですが、GLP-1作動薬は、脳の食欲中枢に作用して「お腹が空いた」と感じにくくし、「もう十分食べた」という満腹感を強く、長く感じさせます。この効果により、①「少量でお腹が満ちている感じ」が続きやすくなる、②視床下部などの食欲中枢に働きかけ、食欲を抑えるシグナルを増やす、③食べ物を見ても「強く食べたい」という衝動が弱くなる、④結果として、次の食事量が自然と減りやすくなると言う機序で1回の摂取カロリーを減らす方向に持っていくことで減量を成功させる薬です。減量効果はSGLT2阻害薬と比べるとかなり顕著に認められます。

GLP-1作動薬の副作用について
実臨床で2型糖尿病に使用した経験上、嘔気、嘔吐、腹部不快感といった消化器症状が高頻度に認められこの副作用により挫折する頻度が高い印象があります。したがって少量投与から服用開始して維持量まで漸増する必要があります。下表に副作用を列挙します。

ただし頻度は低いですが、注意すべき重篤な副作用として
●胆石や胆嚢炎が報告されることがあり、右上腹部痛や発熱、黄疸などに注意

<3>GIP・GLP-1作動薬とは?
GIP受容体・GLP-1受容体の両方に作用することで血糖降下作用と体重減少作用を高めることが狙いの薬です。①膵臓β細胞でインスリン分泌を食後高血糖時に増やす、②膵臓α細胞でグルカゴン分泌を抑え、肝臓からの糖放出を減らす、③胃内容排出を遅らせて、食後の急な血糖上昇を抑える、④食欲中枢に作用し、食欲低下や摂取量減少をもたらす、⑤体重減少を通じてインスリン抵抗性の改善に寄与する、等のGLP-1作動薬が持つ作用に、GIP受容体刺激の効果が加わり、臨床試験では強い血糖改善と体重減少が示されています。
よく見られる副作用は、上記のGLP-1作動と同じです。
ただし頻度は低いですが、注意すべき重篤な副作用として、
急性膵炎:上腹部から背部にかけての強い痛み、持続する吐き気や嘔吐に注意
重い胃腸障害:強い腹痛や嘔吐、腸閉塞などが疑われる症状が出たら注意
胆嚢・胆道系障害:他のGLP-1作動薬と同様に胆石や胆嚢炎が報告されることがあり、右上腹部痛や発熱、黄疸などに注意

GIP・GLP-1作動薬作動薬(リベルサス(R))は他の薬と異なる内服方法が必要です、下記に服用方法のPVをあげておきます(MSD connectより引用許可いただいたおります)。参考にしてください。

②自己皮下注射製剤

GLP-1作動薬/GIP・GLP-1作動薬のいずれかとなります。

●GLP-1作動薬:デュラグルチド(トルリシティー(R))の皮下注

●GIP・GLP-1作動薬:チルゼパチド(マンジャロ(R))の皮下注

マンジャロの皮下注射の手技に関してPVを載せておきます(Lilly.comより引用させていただいております)。

●GIP・GLP-1作動薬::セマグルチド(ウゴービ(R))の皮下注

「ウゴービ」は、肥満症に対して唯一保険適用が認められているGLP-1製剤です。現時点では大学病院や総合病院など、特定の医療機関で飲み保険診療が可能です。しかしながら、最低6か月間の栄養相談後からしか開始できない、投与できる期間が限られるなど、実効性に欠ける制約がついています。自由診療(ただし適用内処方)では上記の制約が解除されますのですぐに施注を開始することができます。

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保険診療で大病院の外来を受診した際にかかる費用の目安

当院で減量目的に処方する薬剤のアウトライン

一般名商標名剤形・使用法薬価(概算値)体重減少効果副作用頻度
SGLT2阻害薬錠剤
1日1回内服
ジェネリックあり 安価軽〜中
ダパグリフロジンフォシーガ5mg
10mg
¥70/1T
¥110/1T
軽〜中
エンパグリフロジンジャディアンス10mg
25mg
¥150/1T
¥190/1T
軽〜中
GIP・GLP-1作動薬錠剤
1日1回内服
高価中〜多
セマグルチドリベルサス3mg
7mg
14mg
¥140/1T
¥326/1T
¥489/1T
中〜多
GLP-1作動薬ペン型注射
週1回皮下注
高価軽〜中
デュラグルチドトルリシティー0.75mg
1.5mg
¥ 2,800/本
¥ 5,000/本
軽〜中
GIP・GLP-1作動薬ペン型注射
週1回皮下注
超高価中〜多中〜多
チルゼパチドマンジャロ2.5mg/0.5ml
5.0mg/0.5ml
7.5mg/0.5ml
10mg/0.5ml
12.5mg/0.5ml
15mg/0.5ml
¥ 1,900/本
¥ 3,800/本
¥ 5,700/本¥7,700/本
¥ 9,600/本
¥ 11,500/本
セマグルチドウゴービMD0.25mg
0.50mg
1.0mg
1.7mg
2.4mg
¥ 6,525/本
¥ 11,477/本
¥ 20,703/本
¥ 32,853/本
¥ 44,485/本
中〜多中〜多
SGLT2阻害薬GLP-1作動薬GIP・GLP-1作動薬の種類と標準薬価、減量効果と副作用頻度について:太字になっている容量は標準使用量を示し、通常効果が感じられる容量です)。これを超えた量での使用は副作用リスクとのバランスから通常の場合は当院では使用をお勧めいたしません。

2026.4.16. uploaded ©All rights reserved KWC.

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