当院では睡眠時無呼吸症候群を疑う症例に関して、
①宅配型簡易ポリグラフィー(PG)検査(WatchPAT(R): フィリップ社)
②宅配型睡眠ポリソノグラフィー(PSG)検査(SPG2(R): フィリップ社) を提供することができます。
①AHIとpAHI
睡眠時無呼吸(及び低呼吸)とは、睡眠中に10秒以上の無呼吸(Apnea)/低呼吸(Hypopnea)を認める状態を示しこの両者の1時間あたりの回数を無呼吸低呼吸指数(AHI: Apnea-Hypopnea Index)として算出することで重症度を評価します。AHIはPSG検査を施行して脳波から正確に睡眠時間を検出することで算出できますが、簡易指標として使用されるPG検査を行った時間から算出した値pAHIはAHIと強い正の相関(通常pAHI<AHIとなります)を示しますので通常は、まずPG検査を受けて頂きpAHIを計測することで重症度の判定を行います。
②pAHIによる重症度判定
pAHIを用いた睡眠時無呼吸の重症度評価の図を下に示します。

pAHIを用いた指標では、pAHI≧30回/h以上は重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群と診断されますが、保険診療でCPAP(持続陽圧呼吸)療法が適応となるのはpAHI≧40回/h以上からとなります。すなはち、pAHI≧40回/hは最重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に相当するのでCPAP療法の絶対適応となります。
簡易ポリグラフィー(PG)検査は、宅配型のフィリップ社製のWatchPAT(R)を用いてご自宅で受けることができます。下記にWatchPATの装着方法に関するインストタクション動画を載せてておきます。
③AHIによる重症度判定
15回/h ≦pAHI≦ 39回/hまでの中等症〜重症の場合は、精密検査として追加のPSG検査を行います。PSG検査でAHI≧20回/h以上と評価された場合、保険診療でのCPAP(持続陽圧呼吸)療法が適応となリます。
AHIを用いた睡眠時無呼吸の重症度評価の図を下に示します。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstrructive Sleep Apnea Syndrome: OSAS)の重症度分類
米国睡眠医学会(AASM : American Academy of Sleep Medicine)ガイドラインの基づく
睡眠ポリソノグラフィー(PSG)検査も、宅配型のフィリップ社製のスリーププロファイラーSPG2(R)を用いてご自宅で受けることができます。PG検査よりも装着する電極が多くなりやや煩雑ですので落ちいて検査ができる週末に検査をされることをお勧めいたします。下記にSPG2の装着方法に関するインストタクション動画を載せてておきます。
PSG検査により計測される閉塞性睡眠時無呼吸の典型的なパターを下図に示します。

気流センサーで補足した無呼吸の後に努力性の呼吸の大きな振幅波形が認められ、酸素濃度の低下が回復すると再び無呼吸を繰り返しているのがわかります。
その他の指標として、パルスオキシメーターによる睡眠中の酸素濃度の変動は重要で、最低血中酸素濃度が90%を切る状態が何度も出現したり、3%ODI(1時間あたりに酸素濃度が3%以上低下した回数)が何度も出現している場合はその間の脳や心臓が酸欠状態にさらされていることを意味します。
④睡眠障害について
PSG検査では、脳波、筋電図、気流センサー、パルスオキシメーター、呼吸運動センサー、体位センサーを装着して計測しますので睡眠障害の質的評価を行うことができます。
米国睡眠医学会(AASM)の分類では、睡眠状態は①ノンレム睡眠(stage N1, N2, N3)と②レム睡眠(stage R)に分類されます(下図)。

ノンレム睡眠:迷走神経の活動が高まり、心臓や末梢の交感神経活動が厳守することで安定した血圧と心拍数を維持できます。
stage N1は、うとうとした眠りに相当し睡眠全体の2~5%を占めます。
stage N2は、脳がある程度休み始める眠りに相当し睡眠全体の40~55%を占めます。
stage N3は、深い眠りに相当し睡眠全体の10~25%を占めます。
レム睡眠:自律神経活動が不安定なため血圧や脈拍が変動します。筋活動が著しく抑制されるためノンレム睡眠時よりも上気道の虚脱が起こりやすくなり、閉塞性無呼吸が増悪しやすい傾向にあります。
stage Rは、眼電図で急速眼球運動の反復が特徴とされ夢を見ることが多い睡眠状態で睡眠全体の20~25%を占めます。
ノンレム/レム睡眠が適切なバランスで存在することが質の良い睡眠を得るための必須条件であり、体に疲れの回復度合いや記憶/感情の整理などに影響します。睡眠関連運動障害群の一つであるレストレスレッグ症候群(RLS)は、不快感を伴う下肢を動かしたいという衝動、運動による症状の改善、安静時や夜間に症状が出ることを特徴とします。また睡眠中の周期性四肢運動(PLMS: Periodic Limb Movement in Sleep))により睡眠障害をきたす疾患を周期性四肢運動障害(PLMD)といい、RLS患者に効率に合併すると言われています。
PSGではこういった睡眠の質的評価や不眠の原因となっている睡眠中の異常運動を発見することができます。
睡眠時無呼吸外来では、日本循環器学会/日本睡眠学会のガイドラインに従い心血管事故の予防のための適切な対応として、CPAPの導入や歯科でのマウスピースの作成などの対応を行います。
CPAPの導入は通常autoCPAP(ドリームステーション(R))とネーザルマスクPICO(R)で行います。
解説動画を下記に引用しておきます。
参考文献
- 循環器領域における睡眠時呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン 2023年度改訂:日本循環器学会
- 陳 和夫. 睡眠時無呼吸症候(SAS)のガイドライン2020 日本内科学会雑誌 vol100(5): 975-980
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020 : 日本呼吸器学会
- 睡眠時無呼吸と循環器疾患. Heart View 2010(5)