Case 24-4; COVID-19 part4: 接触追跡(コンタクトトレーシング)から見えてくるCOVID-19の感染性期間、発病間隔、世代時間と台湾のレポートから窺われる無症候性感染者の感染リスク、qRT-PCR定量法によるCOVID-19感染者体内のウイルス量の経時的変化について

Coronavirus Disease 2019: COVID-19 / 新型コロナウイルス感染症

台湾で行われた詳細なコンタクトトレーシングのレポートから見えてきたCOVID-19の感染様式、COVID-19のウイルス量に関してPubmedから検索し得た範囲での文献的考察を行いました。

①感染性期間(Infectious Period : IfP)

感染性期間(IfP)とは、1感染者が回復するまでの期間に、感受性者(その病気に免疫がない個体)に対して感染させる能力を保持している期間を示します。IfPの終了は、排出されるウイルス量(viral load)が0(または、検出感度以下)になることとは異なります。この期間が長いかどうかは、感染リスクに対する考え方に大きく影響してきます。接触追跡(contact tracing)を行うことで、潜伏期(感染者が発症に至るまでの無症候性期間)と発病間隔(1感染者と接触した1感受性者が発症するまでの時間)を掌握できますが、これにより特に感染伝播を起こしやすいハイリスク期間を特定することが流行制御に重要な因子となります。

(1)感染伝播を封じる上での重点ポイントは感染性期間(Infectious Period: IfP)と世代時間(Generation Time: GT)または発病間隔(Serial Interval: SI)の掌握である。

Liらは、武漢のアウトブレイクを数理モデル(→see 参考文献1)で再評価し直しCOVID-19感染症の発症前の潜伏期は、平均3.69日、症状発症までの感染可能期間は、平均3.48日と推定した。西浦ら(→see 参考文献2)は、武漢から日本に帰国した565名の帰国者の接触追跡によりCOVID-19感染症の世代時間平均7.5日であると算出した(致死率は0.3〜0.6%)。COVID-19の感染症の問題点は、潜伏期(Incubation Period: 発病間隔に近似)の間に感受性者に感染させるに充分な能力を持つていることである。基本的に何らかの症状(軽微症状を含む)を経過中に発症した症例はすべて感染伝播に関与することとなるが、Liらによると無視されることの多い軽微症状症例は、中等/重症例として発症に至った症例の感染力βの約1/2を有する(β’=μβ(μ=0.55))と算出している。

感染力βは、一様ではなく、最終的に重症/中等症/軽症/無症状と確認されたCOVID-19確定診断症例で異なると考えられる。時間をパラメータとした関数driving force (DF)としてDF(t)=βI(t) ( I(t)は時刻tにおける感染者の総数 )を考えるとき、厳密には、DF(t)=ΣβjIj(t) (jは自然数)を考える必要がある。実際に報告される確定診断症例数から尤度関数に当てはめて計算して得られる推定感染者総数の80〜90%は非報告患者となる(DFの大部分を占める)。この意味で軽微症状症例をできるだけ早く摘発し、感染力の強いハイリスク期間のみ完全隔離する事は重要な対策となる。ただし発症しない個体(真の無症候性)と軽微症状でも発症した個体は全く重みが異なる可能性があることを認識する必要がある。

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