大原美術館:『雅歌』モロー

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絵のサイズは小さいのですが、とても繊細に描かれています。

大原美術館
ギュスターヴ・モロー(1826-1898)
「雅歌」1893

【鑑賞の小ネタ】
・モローは美術学校の教授
・象徴主義の先駆者
・教え子にマティスとルオー
・『雅歌』はなんと水彩画
・盗難の過去あり

過去記事《ふさがれた窓》でも紹介しましたが、盗難の経験をもつ絵です。38.7×20.8㎝という小ぶりの絵ですが、とても存在感があります。普通に油絵と思って見ていたら、なんと紙の上に水彩ということで、びっくりしました。こんな風に描けるものなんですね。

モローは聖書や神話を題材に幻想的な作風で知られていて、象徴主義(目に見えないものを物語を借りて象徴的に見える形にする)の先駆者とされています。有名どころをいくつか紹介します。

メトロポリタン美術館
「オイディプスとスフィンクス」1864年頃
ルーヴル美術館
「出現」1876年頃

モローは1888年に美術アカデミー会員に選ばれていて、1891年にはエコール・デ・ボザール(官立美術学校)の教授にもなっています。聖書や神話を題材とするあたりは、まさにアカデミーって感じなのですが、脚色がとにかく凄いです。アカデミックなのにかなり攻めてるって感じです。その辺りが象徴主義の先駆者と言われる所以なのかもしれません。

モローの教育方針は、個性を尊重しその才能を自由に伸ばすことだったそうです。後にフォービスム(内的感情や感覚を色彩を中心に表現)の巨匠となるルオーやマティスが育ったことも頷けます。
モローが活動した時代は、印象派(現実の生活や自然を感じたまま描く)が台頭してきた時代で、1875年には保的的なアカデミー美術展覧会に反発して、「第1回印象派展」が開催されています。そのような時代の流れの中で、モロー自身はアカデミックな世界に身を置いていたわけですが、モローは新しい才能(芸術)を否定するようなことはせず、むしろ認めていたところがあります。事実、愛弟子マティスは、フォービスムまたは印象派の画家としても知られていて、モローがマティスの才能(芸術)の芽を潰していなかったということがよく分ります。モローは『私は君たちが渡っていくための橋だ』と語っていたそうです。モロー先生、素晴らしいですね!
ちなみにルオーは「モロー美術館」の初代館長になっています。

ところで作品名の「雅歌」とは、何でしょうか?旧約聖書の「ソロモンの雅歌」の「雅歌」のようです。ソロモンは、古代イスラエルの王で、ダビデ(ミケランジェロのダビデ像で有名)王の息子です。「ソロモンの雅歌」はソロモン作で、恋愛と男女の賛美を歌い上げる詩とされていますが、諸説あるようです。聖書の解釈はとにかく難しく、議論が絶えないようですね。芸術、特にヨーロッパの芸術は、聖書と神話の世界をある程度把握しておかないと、今一つピンと来ません。サラッと勉強してから鑑賞すると、もっと芸術がおもしろくなるかもしれませんね。