修復といえば、思い出す作品がいくつかあります。ちょっとわけあり修復たちです。
まず1つ目。

エリアス・ガルシア・マルティネス(1858―1934)
『この人を見よ』1910
フレスコ画


なかなかの仕上がりです。
題名『この人を見よ(エッケ・モホ)』は、新約聖書の一場面で、イエスを指し示し放たれた言葉とされています。そしてこの人物はもちろんイエス・キリストです。修復は地元の80歳の女性セシリア・ヒメネスによるものです。原型から大きく変化してしまった仕上がりについて、当時(2012年)大きく報道されました。スペイン語の「Homo(人)」と「Mono(サル)」をかけて「Ecce Mono(このサルを見よ)」などと呼ばれました。作者マルティネスの子孫らは、復元を求めるなどしましたが、地元住民から復元に反対する署名運動が行われました。世界的にニュースで取り上げられたので、思わぬ経済効果を生んだようです。
2つ目。

ヨハネス・フェルメール(1632―1675)
『窓辺で手紙を読む女』1657―1659
修復前

有名なフェルメールの作品です。
1979年にアメリカの美術館に貸し出された際、Ⅹ線で調査したところ、キューピッドの絵が上塗りされ、消されていたことが判明し、専門家による協議の結果、元の状態へ修復することが決まった
Wikipedia
大きなキューピッドの出現です。キューピッドはローマ神話に登場する恋愛の神です。矢を射って恋人同士を引き合わせるわけですが、このキューピッドは杖のようにして弓を持っていますね。そしてよく見ると仮面を踏みつけています。仮面は不誠実や偽りを表しますので、正直な愛じゃないと矢を放たないよ!って感じでしょうか。
そうなると、色々と想像が膨らみます。修復前だと、女性が読んでいる手紙の内容は多岐にわたり、しぼるのが難しいと思われます。でも、修復後のキューピッド登場で、その内容は恋愛絡みであることはほぼ確定と言って良いと思います。しかもちょっとわけありな恋愛。誠実な恋愛を!って感じでしょうか。 画中画(絵画の中に別の絵画が描かれている表現技法)の出現で、ここまで理解が深まるものなんですね。
筆者は、修復前のシーンと静かな感じのする「窓辺で手紙を読む女」が好きだったのですが、フェルメール的にはこれが正解なのでしょう。それにしても画中画のキューピッドの存在感は半端ない。
3つ目は「ヘントの祭壇画」です。
長くなったので次回へ。