全体的に暗い色彩の絵です。

ヨーゼフ・ベル(1891―1935)
「慟哭」1916
【鑑賞の小ネタ】
・ドイツ生まれの画家
・様々な教会の装飾に携わる
・ライン分離派展に参加
額の裏側に、「2334」と記された「Grosse Berliner Kunstausstellung」のラベルがあったそうです。「Grosse Berliner Kunstausstellung」とはベルリン大美術博覧会のことです。この絵の展覧会歴に「1922,Grosse Berliner Kunstausstellung, Berlin」とあり、来歴に「1922, 大原孫三郎 (Magosaburo Ohara) 〔児島虎次郎 (Torajiro Kojima)〕」とありました。(出典:孝岡睦子編『大原美術館所蔵品目録: I. 海外作家』高階秀爾監修. [倉敷]: 大原美術館, 2011年, 10頁.)
画家であり大原美術館の絵画の収集に携わった児島虎次郎は、1921年に3度目のヨーロッパへ旅立っています。この時に収集されたのが、エル・グレコ『受胎告知』、ゴーギャン『かぐわしき大地』、セガンティーニ『アルプスの真昼』等です。
1922年のベルリン大美術博覧会に出品された『慟哭』を児島虎次郎は実際に見たんでしょうかねぇ。いずれにしても、1922年に大原孫三郎(児島虎次郎)はこの絵を購入しています。
ヨーゼフ・ベルはドイツのケルンで生まれています。デュッセルドルフの美術グループ「若きラインラント(ユーゲン・ラインラント)」に所属していました。どんなグループなんでしょう?
1919 年にデュッセルドルフで誕生したモダンアートのグループ “Das Junge Rheinland”「若きラインラント」、そこから 1923 年に分離した
ナチス時代、「若きラインラント」の美術館における作品取引について─デュッセルドルフ宮殿美術館の『作品売買・寄贈目録1913-1953』から 野田由美意
“Rheingruppe”「ライングルッペ」(Gruppe は「グループ」のこと)、 1928 年に設立されたそれらの上部組織 “Rheinische Sezession”「ライン分離派」。これらのグループとしての活動は、ナチス時代に早々と禁止、解散させられる 。
ドイツのモダンアートのグループだったようですね。ちなみにヨーゼフ・ベルは1928年のライン分離派展に参加しています。
「分離派」とは、19世紀末から20世紀初頭にかけて、ドイツやオーストリアを中心に起こった芸術運動です。既存の保守的な芸術家協会からの分離を意味しています。筆者が『慟哭』を見た時、これらの絵を思い出しました👇

フェルディナント・ホドラー(1853―1918)
『無限の眺め』

フェルディナント・ホドラー(1853―1918)
『その日(デア・ターク)』1900
スイスの画家フェルディナント・ホドラーの作品です。ヨーゼフ・ベルよりも年上の画家ですが、同時代の画家と言ってもよいかと思います。色々調べましたが、ホドラーとヨーゼフ・ベルの繋がりはよく分かりませんでした。ただ、スイスのドイツ人画家、フェルディナント・ゾンマーの下に1868年~1872年の間弟子入りしているので、何か関係があるかなと思いましたが…。
『慟哭』を見て行きたいと思います。十字架と横たわる人が描かれています。十字架から降ろされて横たわるイエス・キリストで大丈夫だと思います。見えにくいですが、両端にも十字架の一部が描かれているので間違いなしです。⦅※イエス・キリストの磔刑(たっけい、はりつけの刑)図では磔刑された2人の男と共に描かれることが多い。⦆よく見ると、横たわる人の右脇腹に傷もあります。⦅※ローマ兵士のロンギヌスが脇腹を槍でついてイエス・キリストの生死を確かめた。⦆
そして、姿形がとてもよく似た5人の女性?ドレス(ワンピース)を着ているので女性ということで話を進めます。ドレスの色は向かって左から黒、黄、青、赤、緑に筆者には見えます。キリスト教で用いられる色の意味は色々ありましたが、それらしい意味を筆者が抜粋したいと思います。
黒色:悲しみを表す色
黄色(金色):「尊厳」「王位」「威風」を表す色
青色:聖母マリアの色で天の真実を意味する色
赤色:殉教者の血と情熱の色
緑色:「希望」「成長」「生命」「発展」などを表す色
どうなんでしょう?色の意味、何か関係がありそうですよね。
次は手の動きです。色んなポーズをとっていますね。祈りのポーズ、そして胸の前で手を交差させるのは、敬虔さと従順を表しているとされます。
最後に、この5人の女性たちについてです。筆者は5人は同一人物と考えています。イエス・キリストのそばにいた女性といえば、聖母マリア、マグダラのマリア(マグダラという町出身のマリアで、新約聖書の福音書に登場するイエスに従った女性)が頭に浮かんできますが、どうなんでしょう?
全体的に暗い色彩の絵なので見えにくいですが、まだまだ背景等、色々描かれています。写真ではなく実物をぜひ鑑賞していただきたいものです。


























