この女性は誰なんでしょう?
大原美術館
シャルル・コッテ(1863―1925)
『J.L.B.嬢の肖像』1907
【鑑賞の小ネタ】
・フランスの画家
・ブルターニュで活動
・バンド ノワールの一員
・作品名が変更
J.L.B.嬢とは誰なのか、とても気になりました。調べてみるとこの絵は、以前『ストーブに倚る婦人』と呼ばれていたことが分かりました。絵の中の女性は装飾のある家具に肘をついてポーズをとっていますが、この家具はストーブ、この場合、暖炉だったようです。そして作品名にある「婦人」という表現、「嬢」ではなく「婦人」となっていますね。「婦人」の方が、年齢を重ねた感じがしませんか? 残念ながらその他に詳しい説明はありませんでした。
『ストーブに倚る婦人』より現在の作品名『J.L.B.嬢の肖像』の方がなんだか謎めいています。作品名といえば、画家自身がネーミングしていないことはよくあることで、その場合、後世の人(画家に関わっていた人や研究者)が命名することとなります。また、後の研究によって、作品名が変わることは珍しいことではありません。『J.L.B.嬢の肖像』へ改名したことは筆者的には大成功のように思います。シンプルで誰だかはっきりしない分、関心が深まります。作品名は、作品についての説明があまりない方が良いのかもしれませんね。自分で色々と想像する楽しみが増えますから。
そんなJ.L.B.嬢について、少しふわっとしていますが、次のような記述を見つけることが出来ました👍
「ストーブに倚る婦人」はコッテ婦人の像だそうです。
大原美術館発行.インパクト 東と西の近現代―もう一つの大原美術館.p198
他にも、
田口 掬汀は、大原コレクションの展覧会に関した記事で、この作品は、妻の肖像に違いないと言及している。
大原美術館関連書籍より
田口 掬汀(たぐちきくてい)は日本の小説家で、劇作家、美術評論家でもあります。上記のことから、J.L.B.嬢はコッテの妻のということになりそうですが、筆者的にはなんとなく判然としません。そこで、コッテの妻の名前をなんとか見つけ出して、頭文字と思われるJ.L.B.との関連性を検証しようと考えました。ところが、コッテの情報は意外と少なく、妻の名前は結局分かりませんでした。
この絵の制作年は1907年です。コッテの年齢は、44歳か45歳あたりになりますよね。妻の年齢は何歳くらいになるのでしょう? J.L.B.嬢は筆者には20代に見えます。「嬢」の意味を調べると、【女性、むすめ、特に若い女性、未婚の女性】となっています。コッテの妻と言われても、ちょっとピンと来ません。もしかしたら、結婚前の若かりし頃の妻の姿なのかもしれません。それか、年の離れた妻ですね。
興味深い絵を見つけました👇
ゲント美術館
「JLB嬢の肖像」1906
なんと作品名が同じです! 制作年が1906年になっていますので、大原美術館の「J.L.B.嬢の肖像」より1年前に描かれた作品ということになります。こちらの方がさらに若く見えます。これはもう「婦人」というよりは「嬢」ですよね。見方によっては「少女」でもいいような…。
もう一点、似たような女性の肖像画を見つけました👇
国立西洋美術館
「琥珀の首飾りをした婦人」1906
制作年は1906年、こちらは「婦人」となっていますね。髪型に花の髪飾り、帽子の形状等、大原美術館の「J.L.B.嬢」によく似ていると思いました。
さらにもう一点👇
「女性の肖像」1900
制作年は1900年です。大原美術館の「J.L.B.嬢の肖像」より7年前に描かれた作品ということになります。髪型、花の髪飾り、帽子、「J.L.B.嬢」にこの作品もとてもよく似ていると思います。コッテの妻の肖像画かかどうかは分かりませんが、この女性をコッテの妻だとすると、雰囲気はどうでしょう? 制作年が最も古い、つまり妻が一番若い時期に描かれたはずなのに、なんだか貫禄があるように思います。この雰囲気だとコッテの妻ということでも筆者的には納得です。
コッテは「バンド・ノワール(黒い一団)」の画家とされています。主にブルターニュで活動した画家たちのグループで、暗い色調を好み、写実的なスタイルで描くのが特徴です。大原美術館にはいくつかコッテの作品が所蔵されていますが、どの作品も確かに色調は暗めです。その他の「バンド・ノワール」とされる画家には、ジョルジュ・デヴァリエール(1861―1950)、リュシアン・シモン(1861―1945)、エドモン=フランソワ・アマン=ジャン (1858-1936)等がいます。この3人の作品も大原美術館に所蔵されています。現在展示されているかどうか不明ですが、比べて鑑賞してみるのもいいですね(^.^)