Case 24-7part1; COVID-19 Transmission Route-part1: ①感染経路別の感染リスク(特に飛沫感染とバイオエアロゾル感染)に関して、②サージカルマスクの飛沫拡散防止効果と感染リスクについて

現時点ではCOVID-19の3つの主要感染経路(飛沫感染、バイオエアロゾル感染、接触感染)はほぼ確からしい(1)という全世界的認識から、①マスク着用、②フィジカルディスタンシング、③手指消毒は日常生活においても常識エチケットとして定着している。標準的なサージカルマスク着用による飛沫拡散防止効果は、エアロダイナミクスを用いた計測/解析により一般常識化しており、COVID-19基本対策として全世界的に装着が推奨されている。

図1. 飛沫サイズと3つの主要感染経路:Wei J, et al. Airborne spread of infectious agents in the indoor environment. Am J Infect Control 2016; 44: pp102-pp108のFig. 4より引用。

①無風条件下でのフィジカルディスタンスはマスクなしで最低2m必要である。

オイラー/ラグランジュ粒子追跡法(2)を用いた呼出後の飛沫(エアロゾル)の軌跡の検討により、マスク等の呼出ジェット気流に影響を与える障害物のない状態で、室内、無風条件を想定した場合、飛沫の到達距離は2m以内であることは既存概念となっている。そしてこれが現在のCOVID-19飛沫感染対策にそのままコンバートされている。

図2. 無風条件下で1回咳をすることにより生じた唾液由来の飛沫粒(飛沫雲)の時間経過に伴う軌跡. Dbouk T et al. On coughing and airborne droplet transmission to humans. Phys Fluids 2020; 32, 053310: pp1 – pp10 のFig. 7より引用

図2は、人体の口内温度34℃、気温20℃、地表温15℃、相対湿度50%、大気圧1 atmの無風条件下で高さ1.63mの位置から水平方向に1回咳をした場合、一塊として1’008飛沫(7.7mg)が発生する初期条件からComputational Fluid Dynamics (CFD)を用いて飛沫雲の軌跡を視覚化している(3)。呼出された飛沫は飛沫雲(cloud)を形成することで到達距離を伸ばすことができるが、飛沫の拡散領域は呼出49秒後には床面から1m以内の高さの鉛直方向範囲に収束している。また、呼出5秒後には上界が腰(地表から1.08m)の位置まで低下し一般成人において鉛直方向の直接暴露のリスクは消失している。小さな飛沫(エアロゾル)はストークス数が小さい分より遠距離まで飛散し、滞空時間も長くなる。